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#40 桜

昔は桜というもんが別にそんなに好きでもなかった。
子供にありがちな、チューリップやバラやカーネーション。
わかりやすい花が好きやった。

大人たちが競って花見と言うてわざわざ遠足のように出かけていくのが不思議やった。

今は、見上げる桜は目にしみて美しい。

美しくてこんなに儚い花やったんやと思う。
もうすぐ散るのを知ってか、知らいでか、精一杯に咲いてるようなその姿。

サク婆、センセイ、あたし、捨て男とオカンとそしてハチ。
川べりの特等席のござの上、さっき捨て男のお花見弁当の蓋をあけて、みんなで子供みたいな歓声をあげたとこ。

天気がようて、風まで桜色をしてるような午後。

捨て男はちいちゃいタッパーにハチの分のお弁当まで用意してきて、それを尻尾ぶんぶん振りながら、鼻までタッパーにつっこんだハチがすごい勢いで食べてる。
ほんま、わかりやすい花より団子やなというサク婆の言葉にみんなが笑う。

穏やかな春の光の中、オカンが笑ってる。
時折、風に吹かれて飛んでくる白い花びらがストップモーションのようにオカンの髪の毛にとまる。

一緒の時間を少しでも覚えておきたくて目を凝らす。
目の前の時間の流れは止められへんけど、心の中には留めてくことができるはず。

来年の桜の頃はと、浮かんだ思いを振り切るように首をふる。

わからへん一年後のことよりも、目の前の今を抱きしめたい。

明後日にはあたしは花嫁の娘になる。
うまくオカンが嫁ぐのを見送れるやろうか。
つるかめ、つるかめ、心の中で唱えもって川辺をわたる風を大きく吸い込む。

二度と戻らへん時間をつないでつないで誰もが生きてく。
この目の前の川の流れみたいに。

いつ終わるのか、どこへ辿りつくのかわからへん流れの中を。

あたしもまた、ゆっくり泳いでいこう。
あたしらしく。
一瞬ごとに変わるその水のきらめきに、目をこらしながら。


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ココログ小説」カテゴリの記事

コメント

素敵なお話を本当にありがとうございました。
この2ヶ月半、オカ嫁のおかげで笑ったり泣いたりと大忙しでした。^^;
書籍化される日を楽しみにしています。
ここへ遊びに来ることが無くなるのも寂しいなっ。
また是非新作を!!
よろしくお願いします。

投稿: こむぎママ | 2008年5月16日 (金) 15時36分

ほんとにサクラ色の曲とぴったりでした。
余韻の残る終わり方でしたね。
最後、泣くのかなって思ってたんですけど、少し笑えて、少しジーンときて。
あっというまでした。
また、新しい作品まってますね。
ありがとうございました。銀ママさん。

投稿: かなりん | 2008年5月16日 (金) 16時00分

ここのBGMで流して欲しいわ、サクラ色の歌声。
良い小説やわ。 
書籍になって、どこがどう手直しされたんかも楽しみたいと思います。

仕事と妻しながら、よく書ききったよねえ。

次の作品も、楽しみにしています♪


えいえいおー!

投稿: 殿下 | 2008年5月16日 (金) 19時00分

最後はみんなが桜の下で和やかに過ごしてる風景が
目に浮かんできました。
来年の桜、オカンは見ることができるかどうかわからないけど、
人の幸せって時間の長さじゃないんだな~と感じました。
オカンの嫁入りを読んで1日1日を大切に、楽しんで送っていこうと
思いました。
今日で終わっちゃうのかぁ・・・なんか寂しい気がします。
また最初から読もうかな~。早く本が出るの待ち遠しいです。
次回作も楽しみにしてますね。


投稿: Bikkyママ | 2008年5月16日 (金) 23時55分

そぉだね…悲しんでいられなぃ。涙を流すんなら 今 ちゃんと目を開けて おかんの1つ1つを しっかり焼き付けておかなくちゃsign03まだまだ 続きが見たいです…ほんとは。

我が儘かもしれんけど うちも まだまだ おかんを 見続けて行きたいです。

投稿: ふわ | 2008年5月17日 (土) 02時06分

このような綺麗な終わり方でよかったです。
でもおお泣きで終わった方が簡単で良かったかな...ほんわかしているけど何か人生を考えさせられます。
とにかく出版されるのを楽しみにしてます!!もちろん次回作もね。

投稿: 京子 | 2008年5月17日 (土) 14時37分

感動しました。
なにげにメルマガの時から先生のファンでした。

あーおか嫁終っちゃいましたね。
もっと続きが読みたいけど、先は勝手に妄想します。
ステキなお話ありがとうございます。

投稿: ちえこ | 2008年5月18日 (日) 01時20分

最近うちでゆっくりオカ嫁を読んでいないなーと思って
開いたら最終回ですか!もっともっと読みたいです。
次回作、待ってますから!!

投稿: ayaPod | 2008年5月19日 (月) 20時53分

とても感動しました。

投稿: まるこ | 2008年6月11日 (水) 16時49分

とてもいい作品だと
思いました。

いのちを考える
作品やて思いました。

あたりまえやって
思うことは
なにもないんやって

限りあるから
生をいとおしいと
思えるんやと…

投稿: ひっくん | 2008年6月12日 (木) 15時53分

初めて携帯小説にチャレンジしました

投稿: uyoak | 2009年2月 6日 (金) 02時03分

今日仕事中、何となくこの小説を見つけて読み出しました。
数時間、仕事もせずに、一挙に読み切りました。
年甲斐もなく…感動、温もり、元気、涙…
ありがとうございました。

投稿: 60歳男 | 2009年2月 9日 (月) 17時57分

桜は、神風特攻隊を見送る、桜を振りながら、涙する女学生の姿を思い出す。

投稿: 江見公男 | 2009年3月 4日 (水) 18時15分

チョーいい話じゃないか

投稿:  | 2009年3月31日 (火) 23時31分

夫は肺癌とわかって半年2013年8月蝉しぐれの涙の中1人娘と私をおいて旅立ちました。おかんの嫁入りの映画をTVで見ました。ビデオで再度観ると始まりからストーリーの心がつたわって涙が止まらなくなりました。私は低髄と闘っています娘の優しさで毎日生きています。小説がこんなに身じかに読めるなんて命に感謝です。

投稿: ネンリン | 2014年12月 2日 (火) 18時11分

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